雨上がりの朝、晴れといって良いのか、曇りと言って良いのか、迷うような箱根の海沿いです。
雲というよりは、霞のような薄い膜が空を覆い、それを通して明るい日が降り注いでいます。

みなさまの地方はいかがでしょうか?

今日も日中は20度を超える予報が出ています。この温かさで、各地の桜も一気に咲くことでしょう。

目をさました夏のハーブたち…今日は和名を西洋アサツキ(標準和名はエゾネギ)、英語でChives(チャイブス)をご紹介しましょう。

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ハーブの好きな方たちにとってはもうお馴染みで、定番中の定番となる料理用ハーブですね。

ユリ科ネギ属(Allium 属)のアサツキの一種になります。

種としては日本で古くから栽培されるアサツキ(Allium schoenoprasum var. foliosum アリウム スコエノプラスム ヴァリアント フォリオスム)と同じで、日本のアサツキは西洋アサツキ(Allium schoenoprasum アリウム スコエノプラスム )の変種(ヴァリアント)という関係になります。
アサツキに限らずネギの仲間は、石器時代に遡る古くから人間に利用され、人の手で移動したり、選抜されたりして様々に交雑、変異していて分類が難しいそうですが(野生のオオカミを人が犬として飼いならし、世界のいたるところに連れて行き、様々な犬種を生んだように)、アサツキもヨーロッパから日本の北部まで、ユーラシア大陸の北部に広く分布していて、地域によって様々な変種があるそうです。

西洋アサツキ=チャイブスは、主にヨーロッパや中近東で利用されてきたアサツキの系統で、日本のアサツキに比べると全体に小ぶりなのが特徴です。アサツキが40〜50センチくらいまで伸びるのに対して、チャイブスはせいぜい20センチから30センチほど。いっぺんに取れる量は少ないですが、少しづつ使うにはこちらの方が便利です。

冬は地上部を枯らして越冬した後、2月下旬〜3月上旬(関東南部)頃から新芽を伸ばして成長をはじめます。
株はよく分球(根本には小さな球根があります)して殖え、植え替えは成長の始まるこの時期に株分けしてやると、どんどん殖えてくれます。種まきでも小さな苗がたくさん作れます(ただし、ごく小さな苗の植え替えなどが必要で、たいへん面倒です)。

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初夏に貝紫色( Royal Purple)の、光を受けて透き通るように輝く、美しく可憐な花を咲かせてくれます。 

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この花が魅力で、こんな具合に花壇の縁取りにもなります。

花が終わる6月頃になると、だんだん元気がなくなって多くの場合は黒いアブラムシにたかられるようになります。地植えや自然状態でも夏は地上部を枯らせて休眠するので、アブラムシが着くようになったら無理して栽培を続けず、思い切って地上部を根際で刈り取ってしまうのがベストです。

その後は鉢を日陰に移して、鉢の表面の土が十分に乾燥したら水をたっぷりあげる…を繰り返しながら休ませてあげるようにします。(毎日水をやっていたりすると球根が腐ってしまいます。逆に水やりを忘れてカラカラにしても結構耐えてくれます)

順調に夏越しが出来たら、秋風が吹き始める8月下旬ころからまた新芽を伸ばし始めます。春の成長期に比べると成長はずっと遅く、ゆっくりですが冬が来るまで収穫を楽しむことが出来ます。

11月上旬頃、冷たい風が吹き始めると成長がとまり次第に地上部が枯れていきます。その後は夏の休眠期と同じ様にゆっくり休ませてあげます。

肥料は成長期の春と秋に与えます。普通の液体肥料やタブレット状になった固形肥料を説明書通りに与えれば十分ですが、ネギ類はリン酸分を多く必要としますので、できればリン酸の割合の多いものを与えると、柔らかくて甘いネギが収穫できます。 
畑では、リン酸分の多い米ヌカを根際にたくさんまいてあげると元気に育ちます。鉢植えでは、少しづつ与えて(土には混ぜず、表面に置く状態)で、様子を見てあげて下さい。また、地上部は小さいですが、根はその2〜3倍ほどに伸びて殖えるので、鉢に植え付ける際はなるべく深い鉢に植えてあげると元気に育ちます(地上部とのバランスがとれずに格好悪い…ですが)


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葉だけでなく花も、サラダやスープ、煮込み料理の飾りとして活躍してくれます。

チャイブスは、前回紹介したエストラゴン(フレンチタラゴン)やパセリ同様、広範囲に利用できる料理用ハーブです。

いつも参考にしてもらっているドイツ語のハーブ事典 Das große Handbuch der Kräuter und Heilpflanzren (ハーブと薬用植物の大ハンドブック)では、

「このビタミン豊富なチャイブス(ドイツ語では、Schnittlauch=シュニットライホ=刻みネギ)は、何よりもまず広範囲に利用できるキッチンハーブです。スープ、野菜料理、鍋料理、卵料理、肉料理、魚料理、とりわけスクランブルエッグに刻んで使う他、スープの浮実にクルトンなどとともに最適。人々はこのハーブを、食欲の増進と消化促進に効果があると言い伝えて来ました」とあります。